3Dプリンタを使いたい。でも、プリンタ本体を買うのは高いし、どうすればいい?
もし、自宅で3Dプリントした製品を量産して販売したい、というのであれば、きちんとした3Dプリンタを買われる事をお勧めします。それなりの品質のものが、現在では20万円も出せば買える筈です。精度やスピードに目をつむれば、量産可能です。
そうではなく「3Dプリンタで試作品を作り、その後にちゃんと金型を作って本製品を作りたい」場合は、話が変わってきます。1個や2個の試作品のためにプリンタ本体を買うのはコスト的にナンセンスですし、一般的なフィラメント式だと精度が出しづらい、というデメリットもあります。
3Dプリンタは「借りるもの」です
借りる方法は大きく2つあります。
・街中のクリエイタラボのような施設へ行き、置いてある3Dプリンタを借りる
・ネット3Dプリントサービスにデータを送り、プリントした物を送り返してもらう
もしあなたが、比較的都会に住んでいるのであれば、意外と近くにクリエイタラボのような施設があります。レーザー加工機や、各種工具、3Dプリンタ、Fusion360(3Dプリンタのデータを作るソフトの中でも有名なやつ)なんかを貸してくれる場合もあります。芸大生や、コミケなんかに出展する個人のクリエイタなんかも出入りしていますので、仲間が沢山いるのも特徴です。ラボによっては、定期的にオフ会的イベントを開催している所もあります。1時間幾ら、1日幾ら、といった値段設定で3Dプリンタをレンタルし、完成品の重量によりフィラメント代を別で支払う、といった仕組みの場合が多いのではないでしょうか。誰かほかの人が使っている時は使えなかったりするので、注意が必要です。
ネット3Dプリントサービスは、DMM.makeが恐らく一番有名です。自分のパソコンに入っている3DデータをWEBページからアップロードして素材を選ぶだけで、2週間~3週間くらいで完成品を郵送で届けてくれます。とっても便利です。
じゃあ、どっちの方が良いのか
結論から言います。試作品を作るだけであれば、断然、後者をお勧めします。納期を除けば、精度の高さ、失敗率の低さ、素材の多様さ、価格等の観点から、圧倒的に後者の方が安心です。
以下、私の経験談です。
私が「ウェアラブルリコーダー」の施策を作る為に、3Dプリンタのレンタルを探していた時の事です。ネットで検索したところ、電車で15分程度行った所に、クリエイタラボがあり、そこで1日2,000円程度で3Dプリンタを借りられる事が解りました。私は、3Dプリンタ用に変換した3Dデータの入ったノートPCを手挟んで、勇んでラボに赴きました。若いお姉さんが、とても丁寧に説明をしてくれて、私はすぐに3Dプリンタを使う事ができました。
データを流し込みます。過去、さまざまな映像機材等を扱ってきた経験上、こういう場合は大抵、なんらかのトラブルが発生するものですが、何事もなく進み、無事に3Dプリントが始まりました。フィラメントの射出精度を選べるのですが、あまり細かくし過ぎると、プリントが終わるが明日になってしまう為、中程度の精度でプリントを始めました。およそ4時間で印刷が終わる、と予測時間が表示されました。
4時間、長いって思いますか? 大きさにもよりますが、精度を一番高くすると、10時間を超える事だってざらです。因みに私は、1990年代後半に3DCGの経験があり、当時は小さな1枚の画像をレンダリング(計算)するだけで24時間かかる、とか普通でしたから、こんなもんか、と思いました。
4時間もラボ内で待つのは退屈なので、外に出て、喫茶店に入ったりしました。2時間くらい経ったところでしょうか? ラボのお姉さんから電話がかかってきました。
「印刷中の製品ですが、途中でノズルがひっかかってしまって、一部変形して焦げてしまっています」
私は全く焦りませんでした。なぜなら、こういうトラブルには完全に慣れっこだからです。私はお姉さんに「そういう事もあろうかと、現在プリントしている部品は2個製品をとれるように設計してあるので、1個分が焦げてしまっても問題ありません」と答え、完成を待ちました。
そして、予想通り、完成した部品を見ると、1個分については無事でした。安心して、組付けようとしたのですが…。問題は、精度でした。とにかく、バリがひどい。バリがひどすぎて、それをペンチやニッパなんかで取り除くんですが、本体部分ごとはがれていってしまったりする。最終的には、やすりで擦ったりなどをして、なんとか形にはなったのですが、とにかく精度がひどかったのです。
再挑戦を、と思い、今度は郊外にあるホームセンタが、より業務用のしっかりとした3Dプリンタを貸してくれる、と知り、足を運びました。確かに業務用だ。とても図体の大きい、どっしりとした、いかにも工場に鎮座ましましているようなイメージの3Dプリンタが置いてありました。これなら…と思い、パソコン音痴の係員のおじさんと試行錯誤してデータを流し込み、プリントを始めました。やはり、1つ作るのに4時間くらいかかりますから、ホームセンタ内をぶらぶらしたりしていました。
時間になり、そろそろできたかな…と思い、見に行くと…。なんと、途中から完全にプリント場所を間違えており、全く意図しない形になっていました。
これはまずい、と、おじさんと再度試行錯誤し、改めてプリント開始。ところが、やはり失敗してしまいました。結局、その日いちにち、あれやこれや試しましたが、最後まできちんとプリントできる事はありませんでした。
因みに、その時の様子をマンガにしたのが↓です。
ネット3Dプリントはどうなのよ?
こちらも結論から言います。あちらこちらの3Dプリンタで試行錯誤して、結局うまくいかなかったウェアラブルリコーダの試作品が、何の苦労もなく、今までにない精度で、たったの数千円という費用で、2週間程度という期間で、手許に届きました。これは、本当に驚きました。
3Dプリンタの場合、ノズルから樹脂を射出して積層させていきます。なので、必ず「土台」となる部分が製品とは別で印刷がされます。そして、この土台がバリとなって大きな邪魔をし、印刷後も手間をかけるのですが、ネットプリントの場合、そもそもこのバリが一切存在しません。届いた時点で完成品。しかも、積層をしたが為にできる表面の凸凹もありません。
比べてみて下さい、この違い。(左が3Dプリンタ、右がネットプリント)
※3Dプリンタは接合部にセロテープを使っています
興味があれば、DMM.makeを除いて見て下さいね(アフィリエイトじゃないですよ)
いま話題の3DプリントがDMMでサービス開始!- DMM.com
まとめです
3Dプリント方法 | メリット | デメリット |
クリエイタラボ | ・3Dプリンタの設定を自分で調整できる ・ラボにある他の機材も使える ・ラボに来ているクリエイタと交流できる |
・プリントするまでの時間が長い ・精度が出ない ・失敗する場合がある ・バリが発生する ・選べる素材が少ない(ABS、PLAくらい) |
ネットプリント | ・精度を出しやすい ・失敗がない(失敗するデータはそもそも事前判定で受け付けない) ・多くの素材を選べる(陶器、金属なども) ・安価(ナイロン素材なら数千円程度) |
・納期が遅い(2~3週間) ・なんとなく味気ない |
尚、3Dプリント用データであるstl形式は、金型業者のCADソフトでも読み込みが可能だったりしますので、汎用性があります。つまり、3Dプリンタで試作した3Dデータは、そのまま製品用の金型データとしても使えるって訳です。
私が3Dプリントデータをどうやって作っているのか、については、また改めて記事を書こうと思います。
それでは、また変態発明ブログでお会いしましょう。
バイバイ!